2020年度インタラクティブメディア概論A 第1回

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1. 自己紹介

インタラクティブメディア学科では、ソフトウェアデザイン研究室の教員で、学科のプログラミング関連の授業を行っている。

https://r-dimension.xsrv.jp/classes_j/

個人の活動としては、現代アートをやっている。

http://r-dimension.xsrv.jp/

2. インタラクションについて考えてみる

今回は、自身の専門というよりはインタラクティブメディア学科の学科名にもある「インタラクション(相互作用)」そのものを、深く掘り下げて考えてみたい。インタラクションという言葉は、元々ソフトウェアのインタフェースデザインにおける、人とコンピュータの相互作用という観点から頻繁に使われるようになった。

つまり、インタラクションについて深く考察することは、ソフトウェアの設計を考える上で必要不可欠なことだと言えるからだ。

3. インタラクションとコミュニケーション

インタラクションとコミュニケーションという言葉は、かなり共通の意味合いがあるが、どちらかというとコミュニケーションの方が広い概念だと言える。

インタラクションとは

相互作用、交互作用、相互交流などと訳される。2つ以上の人、物、事が互いに影響を及ぼすこと。情報技術(IT)分野では、一般的に人と機械の相互作用やアクション(行動)に対するリアクション(反応)を扱う事が多い。

コミュニケーションとは

一般的に人間(や動物)同士の情報交換や意思の疎通を表す。通信という意味もあるが、この授業で言うコミュニケーションは、前者のみを扱う。
インタラクションとコミュニケーションという言葉は非常に近いが、通常インタラクションは人間同士ではなく人間と機械、コミュニケーションは人間同士の相互関係を指す事が多い。

4. インタラクションに関連した用語

インタラクションに関連した言葉は非常に似通っていて差が分かりにくいので、ここで一度整理してみる。

インタラクティブメディア

双方向的な情報技術(IT)サービスを差す。もともとはマスメディアが発信者から受信者に一方的に情報が伝達されるという性質であることに対して、発信者と受信者が相互的に情報交換するタイプのサービスという意味で使われた。過去にはマルチメディアという用語も使われた。
こう考えると、インターネットや電話はまさにインタラクティブメディアの代表だと言える。また、好きな映画やドラマなどを見たいときに見る事ができるビデオ・オン・デマンド(VOD)もこの中に含まれる(Hulu、ケーブルテレビなどのサービス)。

インタラクティブアート

インタラクティブアートとは、作品と体験者が相互作用(インタラクション)する形のアートを指す。例えば、体験者の動きによって反応する映像作品などがその代表である。
インタラクティブアートは、映像作品、ソフトウェア、ロボット、ウェブなど様々な形を取るが、その多くはインタラクションを発生させる技術手段としてコンピュータ、センサ、マイクロコントローラなどの最新テクノロジーを利用する。
インタラクション(相互作用)があるアートとしては、歴史的に見ると1960年代のフルクサスなどのパフォーマンスも、作者と観客の間におけるインタラクションが重視されるという点ではインタラクティブアートと言えなくもないが、一般的にはそのインタラクションを発生させるのはコンピュータや機械だという暗黙の了解があると考えていい。

インタラクションデザイン

インタラクションデザイン(インタラクティブデザイン)とは、ソフトウェアや携帯機器などにおいて、機器とユーザとの振る舞いをデザインすること。一般的に良く知られているインタラクションデザインの例は、電話、炊飯器のタッチパネル、銀行のATM、ハードディスクレコーダの操作画面、ゲームなど様々だが、そこには「分かりやすい」、「使いやすい」などの機能性が必要とされる事が非常に多い。
インタラクションデザインとインタラクティブアートの境界は曖昧だが、一般的にインタラクションデザインは「機能性」を重視するのに対してインタラクティブアートは「表現性」を重視する。

5. 対象から見たインタラクション

この授業では、人間と機械だけでなく、広くコミュニケーションもインタラクションと同義語だとして、その概念を拡張してみる。すると、様々な生活空間にインタラクションは存在する。

・人 ⇄ 人
・人 ⇄ 物
・物 ⇄ 物
・人 ⇄ 環境
・物 ⇄ 環境

・人 ⇄ コンピュータ
・人 ⇄ コンピュータ ⇄ 人
・人 ⇄ コンピュータ ⇄ 環境
・物 ⇄ コンピュータ ⇄ 物
・植物 ⇄ コンピュータ
・動物 ⇄ コンピュータ

6. 様々な表現形態におけるインタラクション

上述したように、インタラクションは日常生活の中にあふれているが、一般的には容易に観察可能な形で存在しているわけではない。そこで、人対人、人対物などのインタラクションが主要な要素となっているアートや演芸の表現を見ていきたい。

6-1. 人 ⇄ 人

漫才

漫才は、会話というインタラクションを高度に洗練させたメディアとして興味深い。

上記の漫才を、ボケとツッコミという2種類のインタラクションとして視覚化した。それぞれの会話を1〜5段階の強さで記録している。それぞれのコンビの特徴がはっきりと分かれる結果となっている。

ボケとツッコミの視覚化

言語によるパフォーマンス

2人の登場人物がそれぞれ違った状況を演じている。片桐がテレビドキュメンタリーにおける冒険家を演じる一方、小林は商店街の建て直しを行っているプロデューサーを演じている。この2つの時間軸も空間も違うストーリーは一見無関係に進行しているかのようで奇妙に関連しあってくる。インタラクションが緻密に計算された演劇だと言える。

ラーメンズ 同音異義の交錯

身体的パフォーマンス

格闘技やスポーツを思わせるような身体的なインタラクションを使ったアートパフォーマンス

コンタクト・ゴンゾ

振付家ウィリアム・フォーサイスの作品。ダンサーが20台のテーブルの上下や間を目々苦しく移動し、それぞれの関係性も目まぐるしく変化する。ダイナミックに変化するダンサー同士のインタラクションは必見。

One Flat Thing, Reproduced

6-2. 人 ⇄ 物

スウェーデンのバンドWintergatanのコアメンバーであるマーティン・モーリンが制作した。巨大なオルゴールのようなインタラクティブアート作品だと言える。

Marble Machine

https://www.fuze.dj/2016/09/wintergatan-marble-machine.html

6-3. 物 ⇄ 物

様々な形のルーブ・ゴールドバーグ・マシン。

6-4. 物 ⇄ 環境

風を動力として歩行する立体を制作し続けるテオ・ヤンセン。この作品を使って環境とのインタラクションをデザインしていると言える。

テオ・ヤンセン Strand Beest

7. 結論

世の中に、インタラクションは溢れている。人間の日常生活そのものがインタラクションの連続で構成されていると言っても過言ではない。インタラクティブメディア学科の学生は、単に「人 ⇄ 機械」の関係性におけるインタラクションのみではなく、日常生活におけるインタラクションをつぶさに観察、分析してみて欲しい。

8. 出席

レポートを提出をもって出席と認める。

9. レポート

  1. 「6. 様々な表現形態におけるインタラクション」の中で自分が一番興味を持った作品と、その理由を分析して解説する。400字以上。
  2. 日常的なインタラクション(相互作用)である「会話」において、自身の経験の中でインタラクションがうまくいかなかった(会話が成り立たなかった)事例を取り上げ、その時の状況について詳細に記述する。そして、なぜうまくいかなかったかを分析する。さらに、会話を成立させるためにはどのような要素が必要だったかを提示する。400字以上。

レポートは100点満点で採点する。

パソコンで課題を作成できる学生は「ドキュメント」を作成して提出すること。パソコンがない学生はスマートフォンのClassroomからでも提出可。その場合は「限定公開コメント」で提出する。