木本圭子の作品は、C言語を使い数理的なアルゴリズムによって運動が描画されていますが、その変化過程で見せる表情の豊かさは驚嘆するばかりです。プログラムによる表現は一見規則的な形態や運動をイメージしがちですが、木本氏の作品は規則的なルールによる「多様性」をデザインすることによって唯一無二の表現となっています。
さらに、木本作品の大きな特徴は、日本の古典絵画の空間表現技法に強く影響を受けているという点です。一般的にプログラムによる造形はx, y, z軸の直交座標上で描画されますが、木本氏はこの座標そのものを自身で作成するという手法を取っています。これらは、長谷川等伯の松林図における空間が西洋的なユークリッド空間の模倣ではなく、濃淡によって構成されているという点と共通点を持っています。つまり、日本画の巨匠たちが独自の空間表現をおこなったように、木本氏は空間構造を自身の手で作ることで「構造のデザイン」をおこなっているのです。
運動のデザイン:木本圭子
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