勝井三雄の長年に渡るグラフィックデザイナーとしての功績の中では、一般的には光と影を主題とした色鮮やかな作品のイメージが強いと思われます。しかし、その一方で1960年代の彩紋機「ギョームマシーン」によるパターン作品、1970年代の雑誌「体育科教育」における実験的な運動の視覚化、1981年の「鎖された形態」と題された一連の作品、黄と青の対比による7つのヴァリエーション、1971年の「講談社現代世界百科大事典」アートディレクションなど、その多くは「構造のデザイン」、もしくは「システムのデザイン」が主題であるといえます。
また、北岡明佳の錯視図形を参考に作成した「錯視狂」シリーズは「システムとしての視覚」の根本原理を探求した作品です。これらの一連の表現は、「プログラムのデザイン」と言い切っていいでしょう。そして作者の活動は、マックス・ビルの「Fifteen Variations」や、同世代のデザイナーであるカール・ゲルストナーの「デザイニング・プログラム」の思想や手法と多くの共通点を発見することができます。
この節では、作者の試行錯誤によって作り出された造形が、どのようにグラフィックデザインの成果物として反映されているかを概観します。
形態と色彩のデザイン:勝井三雄
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